『教養としての地政学』を読む
2022年読書:2021年ベストセラー
教養としての「地政学」入門 –2021/2/25刊
(→ただ今のアマゾンベストセラー1位 20220111)
2022年に読んだ本二冊目・・として以下摘み読み。
はじめに、裏日本・表日本という言葉について語り、地球儀を用意して読んでほしいという。
地政学とは、「ある国や国民は、地理的なことや隣国関係をも含めて、どのような環境に住んでいるのか。その場所で平和に生きるために、なすべきことは何か。どんな知恵が必要か。そのようなことを考える学問です。」(p19)
出口治明著 『教養としての地政学』
カバー袖の惹句
「ハートランド」を提唱した、マッキンダーの「陸の地政学」。「シー・パワー」を説いた、マハンの「海の地政学」現代の古典を踏まえて、人類史をシンプルに俯瞰する、教養としての地政学。
著者について
出口治明(でぐち・はるあき)
立命館アジア太平洋大学(APU)学長。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険入社。2006年退職。
訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊超。
主な著書
『生命保険入門新版』(岩波書店)、『仕事に効く教養としての「世界史」 Ⅰ ・ Ⅱ 』(祥伝社)、『全世界史(上)(下)』『「働き方」の教科書』(以上、新潮社)、『人生を面白くする本物の教養』『自分の頭で考える日本の論点』(以上、幻冬舎新書)
、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)『人類5000年史 Ⅰ ・ Ⅱ ・ Ⅲ 』(ちくま新書)、『0から学ぶ「日本史」講義(古代篇、中世篇、戦国・江戸篇)』『世界史の10人』(以上、文藝春秋)などがある。
マッキンダー
(Sir Halford John Mackinder, 1861- 1947)は、イギリスの地理学者、政治家。ハートランド理論を提唱
マッキンダーは第一次世界大戦を基本的にユーラシア大陸の心臓部(ハートランド)を制覇しようとするランドパワー(国家が保有する陸地を利用する潜在的、顕在的な能力の総称)と、これを制止しようとする海島国(イギリス、カナダ、アメリカ、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランド、日本)の連合およびフランスやイタリア等の半島国、言い換えればつまりシーパワーとの間の死活をかけた闘争であると見た。そして、今後の世界の平和を保証する為には、東欧を一手に支配する強力な国家の出現を絶対に許してはならないと力説した。。
マハン
アルフレッド・セイヤー・マハン(Alfred Thayer Mahan [məˈhæn], 1840 - 1914)は、アメリカ海軍の軍人・歴史家・戦略研究者。(wikipedia)『ネルソン伝』『海上権力史論』
概説@Amazon
世界の今の見え方が変わる!
地政学とは何か――?
ナチスも利用した「悪魔の学問」ではない。
ビジネスにも不可欠な「弱者の生きのびる知恵」である。
出口治明が語り下ろす、目からウロコのエッセンス。
≫地政学はなぜ必要か?
平たくいえば「国は引っ越しできない」から。
≫「陸は閉じ、水は開く」
―シュメール人のことわざに地政学の萌芽があった。
≫「どうすれば、サンドイッチの具にならずに済むか、という問題」をめぐって、世界史の権謀術数は繰り広げられてきた。
≫海上の覇権争奪戦に関係するシーレーン(海上交通路)において、「鍵をにぎるのが半島や海峡」である。
≫「人間の真の勇気はたったひとつである。現実を直視して、それを受け入れる勇気である」(p232)
―ロマン・ロランの名言から、日本の今を紐解く。
【目次】
第1章 地政学とは
1.地政学の一般的な定義について
2.地政学の最初の一歩
3.日本で文明の第一歩は北部九州で始まった
4.中国を地政学的に特徴づける長江と万里の長城
5「陸は閉じ、水は開く」
第2章 陸の地政学とは
1.どうすれば自分の住む国や地域がサンドイッチの具にならずに済むか、という問題
2.ローマ教皇領を巡る攻防史
3.フランス王家とハプスブルク家のサンドイッチ攻防史
4.プロイセンの興亡史とビスマルクの水際立ったサンドイッチ戦略
第3章 海の地政学とは
1.半島や海峡の重要性
2.最も古くから発達し、近世まで世界の中心にあった地中海のシーレーン
3.北海とバルト海のシーレーンを制したハンザの盛衰
4.旧大陸と新大陸を結ぶ大西洋の覇権を巡る攻防、その1――ポルトガルの盛衰
5.旧大陸と新大陸を結ぶ大西洋の覇権を巡る攻防、その2――スペインが脱落した理由
6.ネーデルラントがスペインとの独立戦争に勝利した
7.イングランドが第一次・第二次ネーデルラント戦争を起こした
8.名誉革命がネーデルラントを衰勢に傾け海の覇権はイングランドへ
9.アメリカが世界の覇権を掌握する裏付けとなっている強大な海の軍事力
第4章 日本の地政学とは
1.日本が置かれている地政学的な現実
「周辺の国々のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出ていく障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である」(p233)
2.これからの日本はどこと同盟を結べるのか、それとも「日本ファースト」か
日本は国内総生産(GDP)で見れば経済大国。軍事力な相当に強力。
鎖国時代の実相は経済の停滞と大量餓死。最低の時代であったと考える。(P227)
現実的には日本の選択すべき方向はひとつしかない。新たな選択肢はない。
3.アメリカが同盟の相手国として日本を選ぶという保障はどこにあるのか
日本のパートナーはアメリカしかないが、アメリカのパー^トナーは日本一人でない。それが日本の置かれた地政学的な現実。
4.国家間の同盟関係で大切なことは商売のルールと同じである
5.日本の地政学を考えるときに留意すべきこと
日本には世界中が欲しがるもの(世界商品)が何もない。
グローバリゼーションの立場から改革をすすめること。
産業革命の三要素(化石燃料、鉄鉱石、ゴム)もないが、水が多量にある。
製造業のモノ作りに固執して、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やユニコーン企業に象徴される新しい産業を生み出せなかった。
停滞の原因と処方箋ははっきりしている。
キーワードは、GAFAやユニコーン企業を生むキーワードは、女性、ダイバシティ、高学歴(学び続けること)の三つ。
人、本、旅(たくさんの人に会い、たくさん本を読み、色々な場所に出向いていって刺激を受ける)
世界の常識は「根拠なき精神論」ではなく「エビデンス・サイエンス・専門家の知見」に基づく意思決定にある。
日本の進むべき方向は、グロ-バルゼーションへの貢献の中にしか見いだせない。
第5章 地政学の二冊の古典について
1.マハンが着目した「シー・パワー」が与えた影響
シ-パワー(武力によって海洋ないしはその一部分を支配する海上の軍事力のみならず、平和的な通商及び海運をも含む)と海上交通線(Sea lines of communication)の相関関係。(p258)
本国や植民地そして中継地点の港の大切さ、海上交通線を守った国が栄えたこと。
2.マッキンダーはなぜ「地政学の祖」と呼ばれるのか
マッキンンダ―の著書『デモクラシーの理想と現実』(訳者曽村舗信1924‐2006)各章の要約紹介・・・
東と西にヨーロッパを分ける境界線の話。
「17世紀から19世紀に至る歴史が物語ることは、東欧と西欧の間に存在する根本的な対立関係が示されている。その理由はもっぱら東欧と西欧の間の境界線がドイツの国内を通過していることに求められる。」(p278)
「ウィーンとベルリンがいずれも西欧の限界をはみ出して、中世の時代にスラブ民族の領分だったところに位置している」
「シャルルマーニュ(カール大帝、742‐814)の時代、スラブ民族とドイツ人の支配領域の境界は、ベルリンよりも西寄りのエルベ川とその支流であるザーレ川にありました」
「東欧の特色は、主にスラブ系からなる人口の上に君臨するロシア、オーストリア及びドイツの三国を、全体としてまだドイツ人が牛耳る、という構造から成り立っていた点にある」
(p279)
自由とは、自分だけが思い通りになることではなく、
博愛とは自己抑制(セルフコントロール)のことに他ならないこと。
近代保守主義の立場、人間が過去にやってきたことで成功してきたことを重視する。(P289)
「地域的コミュニティーの重要性の強調。平和な安定した国民生活のためには、地域的な共同社会(コミュニティー)が不可欠である。そのようなコミュニティーを成立させることが、地域社会を分断してしまう「階級と利害」を重視する組織の成立を防ぐ唯一の方法なのだと主張した。」(p290)
「隣人としての感覚、および仲間の住民に対する友誼的な義務感、これが幸福な市民生活のための唯一の確実な基礎である
「地政学の休憩所」
「アメリカの毛皮とロシアの毛皮・・ヨーロッパの王侯貴族に人気の服飾品の毛皮・・
北米から輸入されるまではロシアのシベリアから入手されていた。
ロシアが小国だったころはハンザ商人が目玉商品の一つにしていた。ロシアが強国になると、ハンザ商人を締め出し、毛皮貿易でヨーロッパから高い利益を得ていた。
前哨基地ケベック(フランス領)から北米産の豪華な毛皮が大量に流入。
アメリカで起こったことが、ロシアを困らせた・・
毛皮 というと、「毛皮と皮革の文明史–世界フロンティアと略奪のシステム–」下山晃著を読みました。(唐草図鑑コンテンツ)毛皮の衣服の起源
出口治明さんいわく、古典を読むには、ガイド本が役に立つ・・・ わからなくても気にしないこと、と。 (「古典に外れなし!心の赴くままに読めばいい」 日経おとなのOFF 2018年 8 月号)
ベストセラー『哲学と宗教全史』【ビジネス書大賞2020 特別賞受賞作】は、2021年6月に読みました。(はてなブログ※)
グロ-バルゼーションへの貢献:物理的な垣根を超え、政治・文化・経済などが世界規模で拡大していく・・ということだが、今残念状況、
wikipediaに「2020年雄新型コロナウィルスの感染拡大を止めることができず、パンデミックに至ったことで、世界各国で入国制限が開始されることとなり、世界経済の前提にあったグローバリゼーションが破壊されてしまった。」
「このパンデミックを契機として世界中でナショナリズムが発露し、無制限なグローバリゼーションの問題点が人類全体で意識されるようになった」
うむ・・(;'∀')
first updated 20220111; lastModified: 2022年