- byM's Bookshelf 2015 -

『世界文化遺産から読み解く世界史』を読む

世界文化遺産から読み解く世界史
田中 英道 (著), 育鵬社 (2013/9/25)刊  扶桑社発売


内容(「BOOK」データベースより)
それは何を語っているのか? 世界文化遺産から“見えてきた"世界史の実像。 ピラミッド、パルテノン、アンコール、兵馬俑坑、マチュピチュ……。 代表的な世界文化遺産に、歴史と文化の視点からスポットを当てることで、新たに“見えてきた"世界史の実像。
ピラミッド、パルテノン、アンコール、兵馬俑坑…政治・経済・文化の結晶である世界文化遺産から“見えてきた”本当の歴史。

(表紙)


アマゾンで中身検索(目次のほか、見開きの地図など見られる)

軽く一読してこの本で面白いと思ったのは
「もともと持っていた神道的な宗教観の上に仏教を取り入れた日本に対して、 仏教が生まれたインドの風土に合わなかった、インドの共同宗教であるヒンドゥー教が人間の欲望肯定しているので廃れた」(p72)ということ以上に、「日本の仏教は個人宗教として受け入れられ、個々の人々の中で深められたのに対し、仏教国であるスリランカやインドネシアなどにも言えることは、仏教が共同宗教化して受け入れられているということ。(みんなで釈迦を祭る、祈るということに集中していて、祈る人個人の内面に関心が向かない」(p76)その証拠として、釈迦像など画一化している。日本以外の国では、大きな仏教寺院はほどんど遺跡になっている、つまり仏教は滅びている。
確かに、日本の仏像以外にあまり精神的なものを感じたことがない。

もう一つ、
「ロマネスクというのは、ローマの文化を模倣した様式という意味でつけられた名前ですが、『イスラム化(モサラベ化)』という風にとらえた方がいいと思う」(p160)
「赤と白の縞でかたどられた馬蹄形のアーチは、イスラム教独特の様式なのですが、ヨーロッパのロマネスク様式に大変大きな影響を与えている。つまりこの馬蹄系のアーチは、キリスト教建築がそのロマネスク様式の半円アーチで、イスラム教の建築を模倣していたということ。この影響の強い美術をモサラベ美術と呼んでいます。しかしキリスト教における変化は、そこに人物像を加えたこと。」(p126)

田中 英道(たなか ひでみち、1942- ):日本の美術史家 東北大学名誉教授WikipediaHP

以下目次読書。

【目次読書】

第1章 先史時代と古代オリエント――文化と宗教の発生
アルタミラ洞窟、ストーンヘンジ、ピラミッド、エルサレムの嘆きの壁、他
第2章 ギリシアとローマ
アテネのアクロポリス、パルテノン神殿、ローマの歴史地区、パンテオン、他
第3章 アジアと仏教
釈迦生誕地ルンビニ、エローラ石窟、ボロブドゥール仏教寺院、アンコール、他
第4章 中国とチベット
始皇帝陵と兵馬俑坑、雲崗・龍門石窟、敦煌莫高窟、万里の長城、ポタラ宮、他
第5章 イスラム教世界
最古のウマイヤド・モスク、世界一の迷路都市フェズ、アルハンブラ宮殿、他
第6章 中南米の都市遺跡
マヤ文明最大最古の都市遺跡ティカル国立公園、謎の空中都市マチュピチュ、他
第7章 ヨーロッパの誕生とキリスト教文化
シャルトル大聖堂、ノートルダム大聖堂、モン・サン・ミシェル、他
第8章 近代という時代
ヴェルサイユ宮殿、エッフェル塔、エルミタージュ美術館、自由の女神、他
【コラム】比べるとわかる世界と日本
1 ピラミッドvs富士山
2 フランチェスコ修道会vs高野山
3 アクロポリスvs法隆寺
4 タージ・マハルvs平等院鳳凰堂
5 ロミオとジュリエットのヴェローナvs源氏物語の京都
6 サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路vs伊勢参り
7 ルターのヴィッテンブルクvs親鸞の本願寺
8 モン・サン・ミシェルvs厳島神社
9 サン・ピエトロ大聖堂vs大仏殿
10 アウシュヴィッツvs原爆ドーム


結語の部分・・
「戦後の歴史家フェルナンド・ブローデルが(経済史観でなく)文明史観を重視し、そこに歴史の構造を捉えた。歴史の中の持続性に注目し、深層における不変の「長波」の文明といっている。長期持続とは風土に基づくものであり、そこに民族の共同信仰が形成される。」
「今日の「世界文化遺産」の設定ほど、「長波」による世界史の見方を要請しているものはない」「世界史は文化的価値観を中心に書かれなければならない」

» Back to Top
lastModified: 2015年