広義の文学

加藤周一メモ

 

http://heibonshatoday.blogspot.jp/2010/08/24.html
平凡社『加藤周一著作集』全24巻完結
ブックデザイン=池田満寿夫

加藤周一さん・・『羊の歌』とか、私は好きでしたね~
久しぶりに・・
テーマは「文学の擁護」なんですよ
なんに対しての擁護?・科学技術文明に対してだという・・

『加藤周一著作集』1[文学の擁護]ぬきがき

私は[文学]を広義に解釈し、それを科学技術文明に対して擁護する

・ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエルの物語』と
モンテーニュの『エッセー』は16世紀フランス文学の双璧である。
前者は奇想天外な空想譚。後者は物静かな知恵の書である。
『エッセー』は『徒然草』よりはるかに『正法眼蔵』に近い。
前者はよほど学問のある[ユマニスト]人間の馬鹿話。

・日本文学は日本語文学と等値でない

・日本語文学が理屈を言わず、物のあわれ主義に徹しえたのは、
日本人が他方で、すなわち中国語文学の中で、理屈を言い、
人情を超える知的世界を十分に表現していたからにすぎない

・小説という19世紀文学形式は、本来、日常身辺的な具体性への強い思考を含む
・しかしドイツ文学は、小説の形式を使って、
ヴィクトリア朝の典型的なイギリス小説と比べ物にならない
豊富な世界を描き出すことにも成功した
・日常身辺の「ミクロ」の世界と歴史的社会の「マクロ」の状況を媒介する
[ヨーロッパ大陸的]散文

・読者との関係
相手が一人=宗教文学、二人=パーソナル文学、
多数=マスコミュニケーション文学[中世以降]p70

・『宮本武蔵』はマス・メディアの時代の『八犬伝』 
・明治の文学者は口語体を発明したのではなく、明治の口語体を発明したのである
・[日本人は]人間を自然の一部として眺める

・日本文学の散文に、ヨーロッパの文体の論理的明晰を与ええたのは、森鷗外一人

・美しい文体で書いた作家は、ことごとく日本文学の古い伝統に深く学んだ作家で、
幸田露伴は漢学に、泉鏡花は江戸戯作者に、
夏目漱石と芥川龍之介は俳文・漢詩文に・・

・ヨーロッパの文体をゲルマン的(北ヨーロッパ的)なものと、
ラテン的(地中海的)なものに区別することは便利である
・小林秀雄の立場はいわゆる「自然主義」以来の日本文学者のそれに似ているが、
人生如何に生くべきかの表現を「告白」に求めず、
「古典」との対話に求めるという点が異なる

・フランス語の浪漫主義という語の最も早い用例はたぶん1737年。
浪漫主義以前にドイツ文学がイギリスやフランスに影響を与えた例はない。
私見によれば、1868年以来の日本文学は、総じて浪漫的というほかはない。
・象徴主義は第一次世界大戦によって葬られた。
しかし文学史上で象徴派その生命を失ったときに、真の栄光が始まる。
二十世紀精神の美学的態度の本質は、広い意味の象徴主義であるということができる。

・19世紀はルソーのプロテスタンティスムに始まって、ルナンの自由神学に終わった

・リルケは単に人生の無能力者ではなく、人生の無能力者たることを描写し、
描写することによって無能力者ではなくなった人間

加藤周一著作集 (1)文学の擁護

日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫)